【上昇気流】(2023年10月13日)

花粉症

今や日本人の6人に1人が花粉症と言われる。政府は来年の飛散時期を見据えて「初期集中対応パッケージ」をまとめた。都市部周辺を中心に発生源となるスギ人工林の伐採や花粉の少ない品種への植え替えを進める。その重点地域を今年度中に設定するという。

花粉症が急激に増えたのは、戦後の高度成長期に木材需要を見込んで、広葉樹林を伐採して盛んに杉やヒノキを植林し、その後それをほったらかしにしたためである。樹(き)が成長し、花粉を飛散させるようになった頃には、海外からの安い輸入木材に押されて手入れや伐採を放棄した。花粉症は人間の利己的で無責任な行いへの自然の復讐(ふくしゅう)とも言える。

人口の多い都市部周辺を中心に実施するのは、緊急対策としては妥当だが、場当たり的な感じが否めない。日本の森林政策の戦略的なグランドデザインがない。

山が多く雨も多い日本の森林面積は、約2500万㌶。国土の68%、3分の2を占める。昔から木曽ヒノキなど名木の産地が各地にあり、山と言えば木材の経済的価値にばかり目が行くのは、仕方のないことかもしれない。

その分、森林のさまざまな役割や恩恵への認識が不十分だった。近年ようやく、環境保全や治水、防災、そして水資源などエコロジカルで総合的な観点から森林の価値への理解が深まった。

緑豊かな日本の国土のユニークさに着目して森林政策を再構築すべきだ。そのことを花粉が知らせてくれたのではないか。

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