
東京・八重洲には高層ビルが林立し、ここ10年前後、街の景色の変化は驚くばかり。今も急ピッチで再開発が進む八重洲のビル建設現場で男性作業員らが死傷する事故が起きた。
大型クレーンで鉄骨を吊(つ)り上げ、ビルの骨組みに取り付ける作業中のこと。その固定部分が外れ、鉄骨の上に乗って設置作業をしていた男性作業員5人が鉄骨と共に落下、うち2人が死亡した。
作業員らの命綱は落下した鉄骨に付けられていて事故後、SNS上に「命綱を骨組み部分に付けていれば助かったのでは」という内容の投稿も見られた。確かにそうかもしれないが、後知恵の感もある。事故が起こることを予測するのは難しい。
災害事故ではこの5月、東京・品川でクレーンが横転し2人が死傷、7月には静岡市で高架道路の橋桁が落下する事故があり8人が死傷した。背景に現場の労働力不足などがある。
八重洲の事故は地上51階・地下4階建てのビルと一体で整備される7階建ての劇場棟で起こった。建築は建材一つ一つを丹念に積み上げていくものだが、その工程は建物全体を視野に入れた複雑な設計、システムが必要だ。最近は特にそうだ。
「私たちの知識体系と行動の間には、いわばミッシング・リンク(気流子注・失われた環)が存在」「(それを)埋めるものは、人間が人工物を発想し作っていくプロセスの中から抽出するほかない」(吉川弘之監修『ロボット・ルネサンス』)。建築にも当てはまるだろう。