【上昇気流】(2023年9月26日)

優勝決定戦で熱海富士(下)をはたき込みで下した貴景勝=24日、東京・両国国技館

大相撲秋場所は、大関貴景勝が4回目の優勝を果たした。平幕の熱海富士との優勝決定戦では、立ち合いで変化して勝負はあっけなく決まった。正面からぶつかってほしかったが、勝ちにこだわった。

本割では関脇大栄翔との4敗対決を激しい真っ向勝負で制した。だから優勝の懸かった決定戦では、勝って賜杯を手にすることが大関の責任と割り切れたのだろう。

一方、貴景勝の注文相撲に敗れ、初土俵から18場所目、貴花田(後の貴乃花)、朝青龍の24場所を更新する初優勝を逃した熱海富士は、悔しさを隠さない。「(変化に)反応できなかった。本割も決定戦もだめだった」と、実力不足を認めている。

とはいえ今場所、最も相撲ファンの印象に残った力士だろう。前へ出ていく思いっ切りのいい取り口もそうだが、表情がいい。何とも言えない愛嬌(あいきょう)、かわいらしさがある。優勝決定戦を戦ったことで注目され、人気急上昇することは間違いないだろう。

これまで土俵上の仕草などで人気を集めた力士は少なくないが、大関や横綱にまで上り詰めた力士となると数えるほどだ。熱海富士には、愛嬌もある実力派力士になってほしい。そうなれば、これまでにないタイプの大関、横綱の誕生となるだろう。

人気の高まりが成長の肥やしになればいいが、却(かえ)って足を引っ張る可能性もある。しかし「まだ相撲人生は長いので、強くなりたい」という21歳新鋭は、そんな心配はいらないと言っているようだ。

spot_img