トップコラム【東風西風】山岳ガイドの理想、レビュファ

【東風西風】山岳ガイドの理想、レビュファ

山々と登山者

テレビの登山番組を見ていると、地元の人たちしか知らないような、それでいて魅力的な山々が紹介されて、感心する。

登場するのは山岳ガイドたちだ。数々の登攀(とうはん)歴を持った人たちなのだろうが、なじんできた地元の山々に愛着を持つらしい。

日本の山々は必ずしもガイドを必要とはしていないが、一度、案内してもらって、早春の日光の森を散策したことがあった。四季の変化と動植物の知識に圧倒された。が、実は勉強中なのだと語っていた。

彼らガイドを職業とする登山家たちの間で、もっとも読まれてきた山の本はフランスの名ガイド、ガストン・レビュファの著書ではなかろうか。彼は生涯を山に捧(ささ)げ、ガイドの職務を遂行する喜びを本につづり、写真や映画も残した。その精神、姿勢、倫理観はガイドたちの理想とするところだからだ。

「ガイドは彼のために登るのではない。庭師がその庭園の柵を開くように、彼の山々の扉を開くのだ。仕事を行うに当たって、高山はすばらしい額であり、登ることは、彼にあくことのないよろこびを与えるが、なによりも、自分が導いている相手の幸福によって報いられているのだ」(『星と嵐』近藤等訳)

山々はレビュファにとって「独立した神秘の王国」であり、「この王国に入るための唯一の武器は、意志と愛情なのだ」と語る。生きる上で人は精神も養わなければならないからだ。

(岳)

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