トップコラム【上昇気流】(2023年9月23日)

【上昇気流】(2023年9月23日)

京都アニメーション放火殺人事件の初公判に出廷した青葉真司被告 5日午前、京都地裁(イラスト・松元悠氏)

ロックバンド、ゴダイゴのヒット曲「ビューティフル・ネーム」の歌詞には、名前について「ひとつの地球にひとりずつひとつ」という一節がある。この後に「呼びかけよう名前を すばらしい名前を」と続く。1979年の「国際児童年」の協賛歌で、世界の子供たちと一緒に歌っていた。

京都アニメーション放火事件の公判冒頭陳述を聞いて、この歌が心に浮かんだ。検察側が被告の子供の時のことを語っていたからだ。「まことをつかさどる」という「真司」を名に持つ青葉被告のことだ。

両親は9歳の時に離婚し、父親と兄妹の4人で生活。父親から虐待を受け、貧困に陥り、転校し不登校に。親と適切なコミュニケーションを取れず、疑い深くなり「人生どうでもいい」と投げやりになった。犯行はこの成育歴に起因すると検察は言う。

長年、少年犯の心理研究に携わった東洋大学名誉教授の中里至正さんは、親子関係が悪いと共感性や自制心が薄れ、自己中心的となって対人関係に障害を来し、社会適応ができなくなると指摘している(『日本の若者の弱点』毎日新聞社)。その果ての凶悪犯罪である。

青葉被告は事件の8カ月前から犯行を考えていたという。その間、踏みとどまれた理由は「自分の最後のエネルギーと小さな良心だけだった」と報じられている。

良心が大きくなれば、犯罪は防げた。そして暖かい家庭があれば。良心と家庭。それが生命の源泉であると改めて思う。

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