
日本政府観光局によると、6月のインバウンド(訪日客)は、韓国からが54万5100人と最も多く、続いて台湾、米国となっている。一方、コロナ禍前は最多だった中国は伸び悩み、東京電力福島第1原発の処理水放出による今後の影響を懸念する見方も出ている。
旅という字だけで、旅情に誘われるのはどうしてか。要するに、自分の知らない場所を訪れてみたいという衝動が、人間にはあるからかもしれない。旅の起源はいろいろだが、基本的には宗教的な巡礼を名目にしたものから始まっている。日本では四国八十八カ所巡礼や伊勢参りなどだ。
文学作品には、旅に題材を得て作られたものが多い。江戸時代の松尾芭蕉の「奥の細道」はその代表的なものだ。近現代であれば、歌人の若山牧水を挙げなければならない。旅と酒を愛した牧水は、日本全国にその歌碑があることでも知られている。
詩歌では、手あかの付いた表現を使ってはならないというアドバイスがある。例えば「悲しい」とか「寂しい」という言葉だ。通俗的なので、それを使うと文学的な表現にならないという。
ところが牧水には、意外とそうした表現が使われている歌がある。代表的な「幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく」「白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」などである。
その牧水は、昭和3(1928)年のきょう亡くなっている。満43歳。忌日は「牧水忌」である。