【上昇気流】(2023年9月13日)

新幹線

世界的な植物学者、牧野富太郎博士をモデルにした槙野万太郎(神木隆之介さん)が主人公のNHK朝ドラ「らんまん」が佳境に入り高視聴率だという。高知県出身の牧野は94年の生涯で約40万点もの植物標本を作成し、日本の植物学を世界水準に高めた。その間の夫婦の愛情物語だ。

植物を求め全国を駆けずり回るその“健脚ぶり”は驚異的。資料収集で巨額の借金をし妻に負わせるなど呆(あき)れた面もあるが、見方を変えれば大事の前に全てを投げ打つ気構えのある人間だ。地味な学者生活を偉人のドラマとして見せたのは、脚本家の手柄でもある。

木原武一著『大人のための偉人伝』に「面白くてためになるものといえば、まずなによりも偉人と呼ばれる人たちの物語である。これを子供たちに独占させておく手はない」「世のため、人のために尽した偉人たちから学ぶべきは、むしろ大人のほうである」と。なるほどと思う。

高知県の話に、隣の愛媛県が感化されたのだろうか。同県では今、元国鉄総裁の十河信二(そごうしんじ)(1884~1981)を担ぎ出し「『NHK朝ドラ』実現のため署名にご協力ください」と呼び掛けている。

十河は昭和30年代当時、世界で前例ない一大プロジェクトの東海道新幹線建設を先導し「新幹線生みの親」として知られた。

偉業を成した郷土の人物を掘り起こして光を当て、地域活性化に努めたい。「まず自分の町に誇りを持つこと」とは、西洋史学者、故木村尚三郎の言葉だ。

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