
台風13号が日本列島に接近して各地に水害をもたらすとともに、気温が少し下がり酷暑から解放された。暑いと本を読むのが大変だが、これからは期待が持てる。書棚には古本屋で集めた読みたい本が並ぶ。
古本屋の店頭にある「百円均一台」は、スーパーの見切り品のような売り場だが、その店の特徴が表れている。店主のメガネにかなわないもの、売れないと判断したものを置いている場合が多い。
熱心に見ている人と会うことがある。一通り見た後に、中に入らずに次の店に向かう。古本好きには、この均一台に固執する人が少なくない。宝探しのような発見や興奮があるからだ。何の収穫もなく手ぶらで帰ることが多いが、偶(たま)に貴重な本や探していた本を見つけることがある。
学生時代は、この均一台目当てに神田の古本屋街に通った思い出がある。古本屋の店主を経て作家となった出久根達郎氏の『人さまの迷惑』によれば、値段を付けて1年たっても売れなければ半値、それでも売れ残ってしまうと均一台に置く。
もちろん、そうなるともうけはなく赤字。ただ、食品とは違って賞味期限はないから、いつまでも置けるが、古本マニアからは見放される。時々、入れ替えが必要なのは他の商品と同じ。
「古本の場合、必ずしも値が高いから売れず、逆に安いから売れるとは限らない」。出久根氏の言葉である。まだ読書の秋には遠いが、歳時記では立秋の8月8日から秋である。