
外で1人昼食を取ることになり、餃子が売り物のチェーン店に入った。席に案内した店員は「ご注文はタッチパネルでお願いします」と言って、さっさと離れて行く。ファミリーレストランや飲食チェーンでは、今やほとんどタッチパネルだ。
慣れればさっと注文できるが、実に味気ない。いろんなお客が触ったパネルに指先を付けるのも、衛生上どうかと思う。少なくとも、気分はよくない。
タッチパネルを初めて見たのは、回転寿司(ずし)屋だった。声に出して注文するのが恥ずかしい人には好評のようだった。飲食店でのタッチパネルの普及は、人手不足が最大の原因だろうが、日本人はこういうのを進歩的で文化的と勘違いする向きがある。
北陸地方の田舎町に帰省し、地元では有名なラーメンのチェーン店に入った。何とその店では、タッチパネルで注文するだけでなく、ラーメンがベルトコンベヤーで席の前まで運ばれ、それを自分で取るというスタイルだった。ほとんど興ざめした。
欧米では、まずこんなものは普及しないのではないか。食事の場の服装やマナーに煩(うるさ)く、給仕する側もプロの意識が高い。もちろん日本にも食事の作法はあるが、主に和食だ。
とはいえ、チップなしでも店員が丁寧に接客する日本の「おもてなし」は、外国人から見ても素晴らしいものだ。安いチェーン店では仕方がないのかもしれないが、日本の給仕文化についての良し悪(あ)しを再点検してもいいのではないか。