
季節が変わると新しい草花が姿を現す。道を歩いていたらカヤツリグサに出会った。今年初めて目にするカヤツリグサ。周囲にはススキやエノコログサも茂っていた。
公園の流れのほとりにはタマガヤツリがあり、別の所でアゼカヤツリも見つけた。『里山さんぽ植物図鑑』(成美堂出版)を開くと「見た目は地味だがマニアも多い」とある。気流子もその一人だ。
その姿が面白いので、ワレモコウやオミナエシと同じように生け花に使えるし、野の風情を演出することができる。真っすぐ伸びた細い茎の先に、葉と花序と花穂が線香花火のように散開している。
重心が上部にあるので、丸い茎だと曲がってしまうだろう。茎の断面は三角形という特殊な形。三角形は外からの力に一番頑強だが、中心からの距離がまちまちで、水分は外側に届きにくい。
そのため湿った場所を好むという。今の東京はコンクリートで覆われている場所が多いが、昔、まだ路面が土でむき出しの頃、田畑のそばや小さな流れのほとりにたくさん咲いていたのだろう。
名前の由来は、茎を切って両端から裂くと、蚊帳のような形になるからだ。こうして子供たちは遊んだのだ。随筆家の串田孫一もその経験を『博物誌Ⅱ』(現代教養文庫)に記している。友達から離れて、一人、空き地で遊んでいると、先生が探しにやって来て連れて行く。そのときカヤツリグサで蚊帳を作って見せたという。忘れ難い光景だったのだ。