トップコラム【上昇気流】(2023年8月30日)

【上昇気流】(2023年8月30日)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)などは、小型月面探査機「SLIM(スリム)」を搭載したH2Aロケット47号機を鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げる予定だったが、上空の風が強く、打ち上げを中止した。これまでも悪天候が予想されるとして2回先送りされてきた。

国産ロケットを巡っては、H2Aの後継H3・1号機の失敗に加え、7月に新型固体燃料ロケット「イプシロンS」のエンジン試験中に爆発が起きるなど、深刻なトラブルが相次いでいる。残念至極だ。

1990年代、H2A前のH2開発の苦心は当時、よく聞いた。失敗が続き不遇の時に事業団の幹部の一人に問うと「国民に夢を与え国威発揚につながる」「石にしがみついても成功させたい」と答えた。実際、大きな成果を残した。

このH2の開発が終了したのは94年。その後しばらく大型ロケットの新規開発はなかったが、この間に当時の開発担当者らが退職した。その結果、今、ロケット構造の細部にわたり世代間の技術継承がままならないということを聞く。ここ2、3カ月の“滞り”を見ると、その影響が表れているのではないか。

わが国の宇宙産業の裾野は広く、あらゆる工学技術が結集する分野で、工学系の新卒者に最も人気がある職種だ。彼らの期待を裏切ってはならない。

H2開発の時代とは違い、日本は今日、衛星打ち上げ市場の確保を狙い世界と競り合う立場だ。わが国の総力結集を。

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