【上昇気流】(2023年8月29日)

希釈した処理水を放出する前、放射性物質トリチウムの濃度を分析するため採水する設備 27日午前、福島県(代表撮影)

東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出が始まり、これに対する中国側の抗議、嫌がらせがエスカレートしている。現地の日本人学校に石や卵が投げ入れられ、東北地方の観光施設には嫌がらせの電話が殺到している。

科学的に何ら問題はないことは中国政府も十分知っている。そうでなければ、福島第1原発から放出される処理水の6倍から50倍以上のトリチウムを、自国の原発から平気で垂れ流すことはできないはずだ。外交カードに使えれば科学的な根拠などどうでもいいのである。

中国政府は科学的な事実を伝えず、国民の日本への反発を容認するどころか、それを煽(あお)っている疑いが濃厚だ。NHKが報じた宮城県や山形県の食堂や観光施設への集中的な嫌がらせは、組織的な臭いもする。

東北の近隣県を狙ったのは、恐らくどこよりも放出を嫌がっていると見込み、反対の声を上げさせるのが狙いだろう。幸い、100件以上の嫌がらせ電話を受けた宮城県の観光施設の女性は「もうちょっと大人になってほしい」と極めて冷静な対応を取っていた。東日本大震災を経験した東北の人たちの結束は揺るがない。

水産物の輸入禁止や近隣県をターゲットにした嫌がらせは、日本の国内世論に揺さぶりをかけ、分断するのが目的だろう。卑劣な情報工作である▼確信犯的な反原発活動家は論外として、この期に及んでなお処理水放出に反対する人々は、それが中国を利することを肝に銘じるべきである。

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