
8月11日「山の日」を前に、富士山登山者は7月10日から17日で暫定4万2000人、コロナ禍前の4割増となった。富士山から悲鳴が聞こえてきそうだ。
登山者が増えることで環境破壊など、さまざまな問題を引き起こすオーバーユース(過剰利用)。都心からアクセスしやすい丹沢山系でも、年々深刻な問題となっている。
入山者が特定の山に集中すると植生が破壊され、登山道が崩れやすくなる。そのため神奈川県自然環境保全センターは2年前から、丹沢山系の入山者数の自動測定を始めた。
センター発表のデータによると、11の主要山頂の2022年度の入山者数は47万4000人で、前年とほぼ横ばい。最も多いのが大山の13万5000人、次が塔ノ岳の10万4000人である。
ちなみに富士山の昨年の登山者数は約16万人。丹沢の人気の高さがうかがえる。
この数年、筆者は丹沢の山に毎月のように登っている。オーバーユースの一因だったわけだが、そんな実感はない。なぜかと言うと、平日は登山者に一人も会わないこともあるからだ。
登山バスが平日は本数が少なかったり、山小屋が週末営業であったり、土日祝しかも晴れの日に集中してしまう。これがオーバーユースの原因であろう。
高尾山などは年間250万人超が訪れる。若い人の登山人気が高まる一方、山を守る側の人は先細っている。丹沢では入山者に土や水を運搬してもらったり、登山道の整備や木の伐採や下草刈りをボランティアにお願いしたりして、山の環境保全に取り組んでいる。
人気の塔ノ岳の大倉尾根は木道の階段がほぼ山頂まで続き、この木段を歩くたびに登山道を整備するボランティアの苦労に頭が下がる。
「山の日」制定から9年。山の恵みに感謝するとともに、共有財産である山を守っていく環境保全への思いを強くした。
(光)