。右は酒井健夫学長=8日午後、東京都千代田区.jpg)
日本大アメリカンフットボール部の寮で覚醒剤と乾燥大麻を所持した疑いで、21歳の部員が警視庁に逮捕されたことを受け、日大が開いた記者会見。「違法薬物と疑われる物が見つかったのに、なぜ速やかに通報しなかったのか」との質問に、沢田康広副学長は「われわれは捜査機関でなく、教育機関」という返答だった。
「教育的配慮として、大麻だったのであれば、学生に反省させ自首をさせたいと考えた」とも語り隠蔽(いんぺい)の意図を否定した。しかし大学の警察への通報が薬物発見の12日後であったことを思うと、とても額面通りには受け取れない。
もう半世紀も前に生まれた「モラトリアム人間」という言葉を思い出した。モラトリアムは「猶予期間」のことで「いつまでもおとなになろうとしない青年期延長型の人間をそう名づけた」(小此木啓吾著『モラトリアム人間の時代』)。
ネガティブな意味合いだったが、この間、戦後の豊かな社会の中で、一人前の人間になることを猶予されるのは青年の特権だというまでになり、一階層を形成することに。
彼らの存在を受け、大学教育が変質したり新しい大学が生まれたりした。今日、多くの大学は学生を無難に社会へ送り出そうとする「就職予備校」などと呼ばれるほどになった。
今般の記者会見の内容は新卒者を迎える実社会では通用しない。当該部員らは百も承知だろう。モラトリアム人間を甘やかすのは大学当局の保身とみられても仕方ない。