【政界一喝】政権が招いた不信を取り除け

「政治の根幹である信頼が崩れている」。岸田文雄首相が自民党総裁選挙に立候補表明した2021年8月、会見で発した言葉だ。当時は、新型コロナウイルス感染者の増加に加え、IR(統合型リゾート)推進で衆議院議員を辞してまで横浜市長選に立候補した小此木八郎氏が落選するなどが重なり、菅義偉政権は支持率低下で退陣に追い込まれていた。

「旧統一教会の問題、『国葬儀』の問題などがあり、政治の信頼が揺らぎつつある」。その1年後の昨年8月、やはり岸田首相が、自身の政権が支持率を落とした際の発言だ。いずれも「聞く力」を発揮し、政治の信頼を基調にすべきとの岸田氏の信条を示す。

さて、自身が精力を投入し取り組んだ日本でのG7サミットを5月に無事終えたのもつかの間。解散総選挙を決めるか否かと騒がれた6月、国会閉会中の7月と、政権支持率の下落が続く。

首相はこの原因をどこに見いだしているのか。自身が運営する政権自体が、政治の信頼を失っていることに正面から向き合えているのだろうか。

ここにきて、岸田氏が派閥の長を務める宏池会から首相側近の重要ポストである官房副長官に任命した木原誠二氏が、妻の元夫の不審死の再捜査が短期に縮小・終了したことについて、当時、政治的圧力を加えたのではないか、と疑義をかけられている。

再捜査について詳報を重ねてきた週刊文春は「自身の政治権力を熟知し、それを私的に利用する木原氏は、国の舵取りを任せるにふさわしいのか」と独自報道の意味を強調している。まさに岸田政権自体への信頼への問いが突き付けられている格好だ。

再捜査の取調官であった警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係(当時)の佐藤誠氏は、近日の文春取材に続き、7月28日に記者会見を行った。

木原氏が文春発行元を刑事告訴すると流布したことに忖度(そんたく)してか、本件を大手メディアは扱わない。そうして官邸への国民の疑念は深まり、岸田政権への信頼は失われていくばかりだ。

岸田首相の「聞く力」は、聞いた内容を安易に受け入れつつ、国益のための総合判断を誤らせる傾向を持つと言わざるを得ない。

昨年の旧統一教会問題と安倍晋三元首相の国葬儀では、野党をはじめ安倍元首相に反対する勢力に耳を傾けた。教団の解散命令請求への条件には、前例に反して民法の不法行為を含めると突如、方針転換した。国葬儀は実施が遅れた。

一方で、警察行政権への指導力を発揮しテロに対する厳しい姿勢とともに元首相暗殺の真相究明を徹底することは怠った。

つまり日本の安全という最重要の国益を首相としてこれを断固守ると国内外に示せなかったのだ。

官房副長官妻の元夫不審死と再調査の問題は、関連して国民の警察不信という重大事態の可能性に背中合わせであることを軽く見るべきでない。

岸田政権自体が招いた国民の不信を取り除いていくべきだ。(駿馬)

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