人間はどんなふうに昆虫と出会うのだろうか。目で見るか鳴き声を耳で聴くのが普通だ。においで昆虫がいるのを見つけることはほとんどないし、皮膚の触感で出会うことはめったにない。
そもそも、昆虫を目にすることが少なくなった。ここ20年ぐらいの間で、はっきり減った。ところが、耳で昆虫と出会う機会はそれほど減っていない。夏のセミは毎年同じように鳴いている。
トンボとセミを比べてみると、トンボが少なくなったのに、セミはなぜか健在だ。長い期間地下で生活しているから、農薬などの影響を受けにくいためだろうか。
セミの声ははっきり聴こえるのに、姿はなかなか見えない。樹木の葉に紛れてしまって、かなり時間をかけなくては見つからない。暑さの中、セミを探す時間も気力もないので、声だけで諦めることが多い。
虫の声といえば「秋の虫」は聴こえにくい。たまに聴こえても、知識がないので、どんな虫なのかが分からない。セミだけは、鳴き声と種類の関係は分かる。ヒグラシが鳴きだしたとか、あの声はクマゼミだとか分類ができる。
もともと関東にはいなかったクマゼミが現れたのは、西日本から樹木を移動した際、根に付いた幼虫が一緒に来たためとの説をテレビの報道で知ったことがある。一つの仮説には違いない。事情はどうあれ、今や南方系のクマゼミはしっかり関東にも定着した。広い意味での温暖化が背景にあることだけは間違いない。