【上昇気流】(2023年7月13日)

イタリアのランペドゥーザ島はマルタの南西にある小さな島だ。漁村として栄えてきたが、アフリカ大陸からの難民の中継地になり、ドキュメンタリー映画「海は燃えている」(2016年)の舞台になった。

興味深いのは、毎年、難民がここに滞在し、通過するのだが、島民の多くはニュースで知るだけで、難民との接触がないこと。接触するのは医師で、拘留センターに行くか、病院に送るか、死亡した者かを分ける。

島民と難民をつなげるのは彼だけで、トラブルは起こらない。ジャンフランコ・ロージ監督は、全てを受け入れる漁民の気質を描き、「作品の枠の外で政治的なものが呼吸している映画」と語っていた。

難民問題のニュースに触れるたびに、このような例は極めてまれ、と実感する。チュニジアの港町、スファクスで、欧州を目指すアフリカ大陸内部からの不法移民と住民が衝突し、殺人事件が起きた(小紙7月7日付)。

増え続ける移民の排斥を求めて住民が抗議し、移民は罵声と共に追われて警察車両へ。拘束された移民はリビア国境まで連行されたという。

リビアの首都トリポリは欧州への移民の中継地だったが、内戦以降、「すべての『移民』はリビアで『難民』になる」(パトリック・キングズレー著『シリア難民』ダイヤモンド社)。国連の年次報告によれば、故郷を捨てた世界の難民は1億1000万人で過去最多。文明は発展したが人類の心は重く病んでいる。

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