せんだって東京でも、バケツをひっくり返したような雨に見舞われた。梅雨時はいつ雨に降られても、大丈夫なように折り畳みの傘を持ち歩くようにしている。が、この時ばかりは折り畳み傘は「無用の長物」でしかなかった。
土砂降りの雨では、丈の短い折り畳み傘では用をなさず、下手をするとずぶぬれになってしまう。
温暖化のせいなのかどうか、本当のところは不明だが、このところわが国も東南アジアのスコールのような雨に遭遇することが多くなった。
バンコクでは5月から10月までの雨季、夕方の1時間程度、しばしばスコールに見舞われる。
空は一気に掻(か)き曇って暗くなり、わが国でいう「篠突く雨」だ。篠というのは、竹や笹(ササ)の総称。「篠(しの)突く雨」とは、その篠を束ねて突き下ろすような雨をいう。わが国の夕立が、バケツをひっくり返したような雨だとすれば、バンコクのそれはドラム缶をひっくり返したような雨ということになろうか。しかも、バリバリ鳴り響く雷を伴っている。
なお、バンコクがスコールに見舞われると、タクシー運転手は豹変(ひょうへん)する。
それまでメーターで走っていたタクシーが、いきなり交渉制に変わるのだ。
ドライバーは雨で需要が一気に増したことで強気になり、割増ならまだ良心的で、メーター料金より2倍、3倍と吹っ掛けてくることも珍しくない。
バンコクのタクシードライバーは、タクシーのオーナーから一日単位で借り受ける形で請け負っているため、一日の売り上げが収入に直結している。
だから時を見るに非常に「敏」だ。(T)