今も働く「トイレの神様」

清掃中の作業員

俳優の役所広司さんがカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した「パーフェクトデイズ」(ビム・ベンダース監督)は、公共トイレで寡黙に働く清掃員が主人公だ。日本公開は今年末予定。久しぶりに「見たい」と思った映画だ。

理由は二つある。一つは、この映画制作は今、賛否両論が渦巻く渋谷区の「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの一環で、映画の舞台となった公共トイレもプロジェクトで造られた17カ所の一つ。「多様性を受け入れる社会の実現」を目的に計画され、斬新なトイレができたとの評価がある一方で、女性専用トイレがない施設とあって批判もある。映画がどんなメッセージを発しているのか、知りたいと思っている。

筆者は、トイレの清掃員と言えば、女性を思い浮かべる。先日もトイレ掃除中の女性に「ご苦労さま」と声を掛けると、「ありがとうございます」とだけ応え、清掃を黙々と続けていた。映画はなぜ女性ではなく男性清掃員を主人公にしたのだろうか。

もう一つは、トイレ掃除を通じて、ドイツ人監督が日本文化と日本人の心性にどこまで迫っているのかを見たい。2010年に楽曲「トイレの神様」が流行(はや)った。作詞・作曲して歌った植村花菜さんはその年のNHK紅白歌合戦に出演した。「トイレにきれいな女神様がいる」という発想を、キリスト教文化圏の監督はどう受け取るのだろうか。

素手で便器を磨く清掃員もいる。筆者は東京駅の男子用トイレで、そんなプロに出会った瞬間「トイレの神様だ」と思ったことがある。実業界・芸能界・スポーツ界などで活躍する〝プロ〟の中には「精神を磨いている」と、トイレ掃除を続ける人が少なくない。筆者もトイレ掃除をした後の方が仕事に集中できることを経験している。もしかしたら、日本人よりも外国人の方がその心性を活写できるかもしれない、と期待している。

(森)

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