【上昇気流】(2023年7月4日)

伝統芸能の殿堂、東京・三宅坂の国立劇場は、建て替えのため10月末で閉場となる。昭和41(1966)年の開場から55年以上経(た)ち、老朽化が進んだためという。客の目にはそれほど不便には見えないが、興行側にはいろいろ問題があるのだろう。

伝統芸能を次の世代に繋(つな)げるという狙いもあるようだ。昨年、日本芸術文化振興会の河村潤子理事長(当時)は「文化観光という新たな視点から賑わいを創出することで、初めての方を含めて多くの人に訪れてもらえるようにしたい」と述べている。

さよなら公演が昨年から始まっているが、公演プログラムに文楽の人形遣いの桐竹勘十郎さんと吉田玉男さんの対談が掲載されている。その中で玉男さんが、昭和40年代の劇場周辺を「皇居の近くで閑静ではあるけれど、ほんとに何もなかったね」と振り返っている。

東京・渋谷区本町の新国立劇場は立地など議論があった。気軽に楽しむというより、いかにも芸術を鑑賞する空間という雰囲気で、それが鼻に付くと言う人もいる

国立劇場も半蔵門線が通って交通の便はよくなったが、今も劇場街の雰囲気は薄い。新しい国立劇場は2029年秋の完成予定で、ホテルやレストランなども入った施設に整備する。

全体が劇場街のような空間をつくるのは結構なことだ。観客は非日常を味わいに来るのだから高級な店も少なくないだろう。ただ若い人にファンになってもらうには、手ごろな値段の店も必要になる。

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