【上昇気流】(2023年7月2日)

「寄せる波大きく返す海開」(稲畑汀子)。7月は登山開始の「山開き」や海水浴場開設の「海開き」がある。コロナ禍からの経済社会活動の正常化が進み、今年の夏は山へ海へと人が押し寄せそうだ。

山男というと、どこか都会ずれしていない素朴な男を想像してしまうが、海男という表現はあまり聞かない。海はサーフィンやヨットなどの遊び場所というイメージが強いからかもしれない。だが、板子一枚の下は地獄という船乗りの生死を懸けた場所でもある。

海に関する文学で思い出すのは、ノーベル文学賞を受賞した米国の作家ヘミングウェイ。男らしさを追求したヘミングウェイは、釣りや狩猟や海を愛して、行動派の作家として知られている。

特に、スペイン内戦には志願兵として関わるほどだった。心理描写を排した簡潔な文体で知られ、ダシール・ハメットやチャンドラーらと共にハードボイルド小説の先駆けとされている。

ノーベル文学賞の受賞対象となったのは、海を舞台にした『老人と海』だ。峠を過ぎた老人の漁師サンチャゴが不漁続きの中にあっても、あきらめずに海に挑み続け、最後には巨大なカジキを釣り上げる。しかし、カジキはサメに食われて骨だけになって帰港する。

結果だけを見れば、全く徒労ともいうべきものだが、「勝者には何もやるな」というヘミングウェイらしいストーリーである。そのヘミングウェイは、1961年のきょう亡くなっている。

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