トップコラム【上昇気流】(2023年6月25日)

【上昇気流】(2023年6月25日)

第169回芥川賞・直木賞の候補作がこのほど発表された。候補はそれぞれ5人になり、初めての候補は芥川賞が2人、直木賞では1人。芥川賞が新人賞で、直木賞の方は実績を問われる賞となっている。

それを示すように、直木賞候補者は冲方丁さん、垣根涼介さん、高野和明さん、月村了衛さん、永井紗耶子さんら、既に単行本を何冊も出している実力者ばかり。その点では、たとえ受賞に至らなくても、今後も活躍していくことは間違いないだろう。

それに対して、石田夏穂さん、市川沙央さん、児玉雨子さん、千葉雅也さん、乗代雄介さんの芥川賞候補者は、受賞してもその後も活躍していけるかどうかは未知数である。実際、これまでの歴史の中で、受賞後に鳴かず飛ばずで忘れられた作家も少なくない。

ただ話題性という意味では、新人賞である芥川賞の方が断然大きい。新しい未知数の才能の発見という点で、今後の文学の方向性を切り拓(ひら)いていくことが期待されるからだ。

とはいえ、受賞者がテレビのニュース番組で報じられるのは、文学賞では極めてまれであることは確かである。創設者の菊池寛も、これほど大きなイベントになるとは予想できなかったのではないか。

昭和44年の第61回芥川賞・直木賞はほとんど話題にもならなかったことを、作家の佐藤愛子さんが又吉直樹さんとの対談で語っている(佐藤愛子編著『愛子戦記』文春文庫)。選考会は7月19日に開かれる。

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