東南アジアを歩くと、人間は南国の太陽にあぶりだされてへとへとになるのだが、植物は恵みの太陽を全身に浴びて至って元気だ。
中でもはつらつとして元気いっぱいなのは、寺の境内などでしばしば目にするプリメリアだ。高木になると7、8〓程度まで成長する。ラオスでは、このプリメリアが国花になっている。
プリメリアには、白い樹液が存在する。枝などが強風にあおられ折れたりすると、その断面から白い樹液が出てくる。ちょうど、イチジクの木がそうであるように、細菌や微生物、害虫などの侵入を防ぐための防衛システムだ。
葉は傷の治療に用いたり、鎮静効果のある煎じ薬として用いたりするのだが、白い樹液の効能なのかもしれない。イチジクの木も傷つくと白い樹液が出てくる。これに触るとかゆみが出てきたりするが、プリメリアの樹液も同様だ。通常、薬と毒は紙一重の違いで適度の量だと薬になり、多過ぎれば毒に変じる。
なおプリメリアの花は、ハスやラン同様、仏さまや神さまに供える花として使われる。とりわけ水の神へ感謝の祈りを捧(ささ)げるロイ・クラトン祭りには、ハスやバナナの幹を土台にプリメリアの花などを飾りたてて、わが国の精霊流しのように川に流す。ハワイでは首飾りのレイに、このプリメリアの花を使うことがあるが、ハワイはもともとポリネシア系の人々が渡った島だ。東南アジアのプリメリアに込められた伝統的意味と共通するものがあるような気がする。(T)