1912年大西洋上で氷山と接触し沈没した豪華客船タイタニック号を観(み)るツアーの潜水艇が消息を絶った。操縦士を含む5人が乗り組んでいる。カナダのニューファンドランド島沖の沈没地点周辺で、懸命の捜索活動が行われているが、艇内の酸素も残りわずかという。
このニュースを聞いて、まず20世紀最大の海難事故も観光資源つまりビジネスにしていることに驚いた。ツアーの参加費用は1人25万㌦(約3500万円)。
大枚をはたいて宇宙空間など、普通行けない所へ冒険をするのはもちろん自由だ。しかし、日本ならば犠牲者への慰霊そして遺族の気持ちに配慮し、こんなツアーは企画できないだろう。
タイタニック号の船体は85年に発見されるが、98年には英国の会社が海底の残骸を観るツアーを売り出している。97年にはジェームズ・キャメロン監督、レオナルド・ディカプリオさんら主演の映画『タイタニック』が大ヒットする。
「ナショナルジオグラフィック」ウェブ版によると、2001年には、タイタニック号の船首に潜水艇を停泊させ、その中で1組のカップルが結婚式を挙げた。ロマンチックな映画のシーンにきっと影響されたのだろうが、この船で1500人以上が亡くなったことを忘れている。
消息を絶った潜水艇には、のぞき窓の強度など安全性に問題があったとの声も上がっている。今後検証が必要となってこよう。それと共に倫理的な論議も行われるべきだ。