筆者の子供が中学校でお世話になった先生に、土曜日や日曜日、毎週のように近所で出会った時期がある。部活動の指導で登校していたそうで、あいさつをしながら「先生という仕事は大変だな」と思った。
教員の働き方改革は、今の教育界の重要テーマだ。4月に公表された文部科学省の調査によると、教員の1日の在校時間(中学校)は昨年度、平日が11時間1分、土日が2時間18分で、6年前より30分~1時間ほど減った。このところ議論になっているのは、残業代の代わりに給与を上乗せする給特法の見直しや部活指導の地域移行、教員不足と採用試験志願者減少への対応などである。
知人の教員に聞いたところ、学校現場の厳しい状況は確かに感じるが、一方で仕事のやりがいを少しでも後輩に伝えたいと言っていた。
以前、『心にのこる最高の先生』(関東学院大学編)という本を読んだことがある。同大学が主催したエッセーコンテストの受賞作を集めたもので、教員が子供たちの人生に大きな影響を与えていることに感銘を受けた。
筆者にも心に残る先生がいた。小学校高学年で担任だった女性の先生で、子供心に近寄り難い雰囲気があった。校庭で絵を描く授業中に友人と悪ふざけをして厳しく叱られたことを覚えている。筆者の引っ込み思案の性格を直せるようにと、いつも気に掛けてもらったことも思い出である。
上記の本は、「私たちみんなの心にのこる先生への思い出を文章にして、その思いをみんなで分け合うことによって教育への問いかけをもつ機会にしたい」と記している。今は教員という仕事の問題点ばかりがクローズアップされやすい。もちろん改革は重要だ。一方、学校現場には子供たちの心に残るような人間力を持った先生は多いはずだ。そうした先生方が何より教員としての夢とやりがいを持って働くことができるような改革が進んでほしい。
(誠)