
岐阜市にある陸上自衛隊の射撃場で18歳の自衛官候補生が自動小銃を発射し、教官ら3人を死傷させた。先月には長野県中野市で警察官2人を含む4人が猟銃や刃物で殺害される事件が起こったばかりだ。
こんな陰惨なニュースが続くと、それがトラウマ(心的外傷)になって凶悪事件を思い出させる。まるで心は「ブラック・ジューン」(暗い6月)である。
15年前の2008年6月8日、東京・秋葉原で25歳の派遣社員の男が2トントラックで歩行者天国に突っ込み、ダガーナイフで次々と通行人を刺して7人を死亡させ10人に重軽傷を負わせる事件が起こった。
新聞は事件から15年で特集を組み、被害者遺族や関係者の話を報じていた。当時は派遣やワーキングプアが注目されたが、裁判では「歪(いびつ)な親子関係」「家庭問題」が浮き彫りにされた。ところが、加害者家族への「配慮」からか、家庭はタブー視されている。
それでふと思った。元来、6月は家庭にまつわる月ではなかったか、と。英語のジューンは、ローマ神話のジュピターの妻ジュノーから取られた。結婚生活の守護神である。花嫁は「ジューン・ブライド」と呼ばれ、幸福が約束された。
1年で最も昼が長くなる夏至も6月である。三重県伊勢市の二見浦では夫婦岩の間から差し昇る朝日を浴びて禊(みそ)ぎを行い、家内安全・夫婦円満を祈る。明日の父の日もまた6月である。「ブラック」から解放される秘訣(ひけつ)は家庭にありはしないだろうか。