梅雨の季節である。梅雨は「つゆ」とも「ばいう」とも読む。つゆはもともと北九州、中国、近畿、北陸地方の方言だったようだ。これに対し、東京以北では「にゅうばい(入梅)」と呼ばれていた。
1950年代ごろまで東京近辺で入梅と言っていたことは記憶している。しかし、その後つゆと呼ばれるのが普通になった。令和の今では、日本全域でそのように言われている。東日本でもつゆと呼ばれる歴史は長くなった。
なお、入梅は「梅雨に入る時期」とか「梅雨の初期」という意味ではなく、梅雨の期間全体をいうものだった(柴田武著『生きている日本語』講談社学術文庫)。言葉が変化していく典型的な例だ。言葉そのものがもともと生成するものだったのだ。
もう一つ。東日本では「村」を「むら(訓読み、漢字に日本語を当てはめたもの)」と読むことが多いが、西日本では「そん(音読み、漢字の原音に近いもの)」が多い。ただ、千葉県は東日本だが、例外的にそんと呼ばれることもある。
西日本から黒潮に乗って移住したケースや海女の文化が関わっていることがあったのだろう、と柴田氏は推定している。となると、千葉県の沿岸部にはそんが多いのかもしれない。
似たようなことが「町」についても言える。東日本では「まち」と呼ぶことが多いが、西日本では「ちょう」が多い。言葉も文化の一つだから「東日本文化圏」と「西日本文化圏」の違いはありそうだ。