
テニスの全仏オープン女子ダブルス3回戦で、加藤未唯選手の打球がボールガールに直撃し、失格となった問題が、なお尾を引いている。トーナメントディレクター、アメリ・モレスモ氏は、失格の決定が「かなり明確な四大大会の規則に基づいたものだ」と述べたが、納得する人は少ない。
加藤選手はビデオ映像による判定を求めた。だが規則で映像判定の対象となるのは、ボールのインとアウトの確認だけという。加藤選手は処分を不服とし、四大大会委員会側に提訴している。
テニスファンの批判は、最初「警告」としたのを、対戦相手のマリエ・ブズコバ(チェコ)、サラ・ソリベストルモ(スペイン)組の抗議を受け、「失格」とした主審や運営側、そして対戦相手に向かっている。
とりわけ正々堂々と戦うより、相手を失格に追い込んで勝ち進んだ対戦相手は、どう見てもスポーツ選手らしくない。さもしい行為だ。
テニスは、紳士淑女が愛好する上品なスポーツのイメージがある。日本人テニス選手で初めてウィンブルドンに出場した清水善造が、対戦した当時実力世界一のビル・チルデン(米)が態勢を崩した時、敢(あ)えて「やわらかなボール」を打ったという話は、本人が否定した。しかし、清水のコート上の紳士的な態度がそんな美談を生んだとも言える。
失格の試練を乗り越え、混合ダブルスで見事、四大大会初優勝を果たした加藤選手。これからも淑女プレーヤーの道を進んでほしい。