トップコラム【上昇気流】(2023年6月3日)

【上昇気流】(2023年6月3日)

「ザ・スパイ」と銘打った連載モノはタイトルも目を引いた。「“天国”日本列島にうごめく奇想天外な“情報の犬”たち」(1)「罰金攻勢で“レポ船”を育て操る ソ連の恐るべき真意」(3)。中身もなかなかのものだった。

これは今週発売の6月9日特大号をもって休刊となった週刊朝日の在りし日のものである(昭和53年6月16日号、同23日号)。手元の資料から拾い出した。折しも当時、宮永幸久元陸将補とソ連スパイが密(ひそ)かに接触中で、後に宮永スパイ事件が発覚した(昭和55年)。

あの頃の週刊朝日は読み応えがあった。何と言っても作家、池波正太郎の歴史小説『真田太平記』と司馬遼太郎の大紀行『街道をゆく』の二枚看板である。おまけに冒頭の「ザ・スパイ」といった、今なら産経と見まがう特集もあった。それでつい手に取ってしまうのである・

それから文字通り何十年も買うことがなかった。つまらなくなったからである(むろん気流子的に)。それが朝日新聞に「週刊朝日は今号をもって休刊します またね!」との広告が載った。これにはちょっぴり寂しくなった。

最後ぐらい買ってみるかと書店に立ち寄ったが、見当たらない。店員に聞いても「さて?」と生返事である。売り切れたのか、日頃から置いていないのか、バイトらしき店員は首を傾(かし)げるばかりだった。

他店に行くかと思ったが、考え直した。気流子とは縁がなかったのである。正真正銘、さよなら週刊朝日。

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