フィリピンではコロナ禍のロックダウンをきっかけに、スマホを使ったキャッシュレス決済が一気に普及した。買い物だけでなく、これまで何時間も並んでいた銀行での送金や電気代の支払いなどがオンラインで可能になったからだが、その普及は物乞いにまで及んでいる。
マニラ首都圏のような大きな都市では物乞いは珍しくない。観光地で子供の集団が外国人に小銭を求めたりするだけでなく、コンビニで勝手にドアマンを引き受けて出入りする客に施しを求める図々(ずうずう)しいタイプもいる。
最近ではこれらの古典的な物乞いに加え、観光客にキャッシュレス決済口座のQRコードを提示するハイテク物乞いが出現し話題になっている。
ある女性が、マニラ市を観光中、近づいてきた物乞いの少年に「小銭がない」と告げると、なんと印刷されたQRコードを提示されて振り込むよう求められ、時代への適応ぶりにビックリしたそうだ。
しかし、このような子供の物乞いが、犯罪シンジケートによって組織化されているといううわさも絶えない。犯罪組織が朝と晩に子供たちを送迎し、金を回収しているという構図だ。QRコードが犯罪組織や保護者によって用意され、子供が物乞いを強いられている可能性も十分にあり得る。
幼い物乞いに同情する気持ちも分かるが、施しが目の前の子供を助けることにはならない場合もあるので複雑だ。(F)