【上昇気流】(2023年5月31日)

硬式野球ボール

野球の審判(主審)は、コントロールの悪い投手のギリギリの投球を「狙いから外れた」と判定して「ボール」を宣告する。逆にコントロールがいい投手の場合は、「ギリギリを狙ってきたんだな……」と判断して「ストライク」とする。

江川卓著『巨人論』(SB新書/近刊)中の言葉だ。もともとコントロールの良かった江川さんのことだから、野球人生で審判に助けられた機会は多かったことだろう。

投手で「コントロールがいい」というのは信用・実績を意味する重要な要素だ。球界も人間世界には違いないから、コントロールのいい投手は、結果として審判を味方にしてしまう。野球に限らない。信用や実績は世間のあらゆる分野で有利に働く。

実力派の作家の作品と、無名作家の作品を比べれば、どう考えても実力派が得をするようになっている。そこを突き破るためには、新人なりの「新しさ」が必要だが、そうそう簡単ではない。

江川さんが投げると試合が早く終わった。牽制(けんせい)球を投げることが少ないのも、試合時間が短い理由の一つだった。牽制が苦手なわけではないのだが、「走者よりは打者に集中したい」という方針だったようだ。

長嶋茂雄さんは「勘」の名選手と言われてきた。だが、長嶋さんのケースは勘ではなく「読み」だとの江川さんの見立ては分かりやすい。「実際は相手の動きを読んだ上で打つ人だった」というのが江川さんの洞察だ。野球を超えた人間論として面白い。

spot_img
Google Translate »