
沖縄県の宮古島付近で起きた陸上自衛隊のUH60JAヘリコプター事故から1カ月半余。当初、サンゴが茂る水深100㍍以上の海底を把握しにくく、捜索は困難を極めた。自衛隊による必死の活動が続けられ、1週間後には機体を発見。その後、搭乗員10人中6人が遺体で収容された。原因究明とさらなる救難活動が待っている。
水深100㍍11気圧での潜水作業には大気圧の11倍の圧力が掛かるため、作業はいちどきに30分が限度。今回、力を発揮した「飽和潜水」技術は、海中の探査技術を含め世界でトップクラスだ。
日本のロケット開発の父、糸川英夫氏は、地球の重力に逆らいロケットを飛ばすことの難しさをよく強調していたが、地上の圧力と違う海中での作業も同等の苦心が要るはず。
深海で遭難した潜水艦から乗員を救出する任務を担う潜水士を養成しているのが、海自の潜水医学実験隊(神奈川県横須賀市)だ。深度450㍍を想定した環境での作業訓練も行うという。
日本は水深のある太平洋と日本海という天然の要害を持つため、海洋国としての伝統や技術が蓄積されてきた。防衛関係だけでなく資源調査の方も世界に知られる。以前、深海探査の支援母船「なつしま」を見学し、その大きさに目を見張ったのを思い出す。
今、海中の防衛・軍事上の役割が急速に増し、一方、日本の領海は天然資源の宝庫でもある。宇宙と共に海中への国民の関心をさらに高めたい。