子供も大人も自然を求めている

蛭ヶ岳北面から望む檜洞丸(ウィキペディアより)

子供の頃の自然体験は後々の人生に影響を与えると言うが、山で中高年の登山者と語を交えると、それを実感する。

先週、主宰する花の会のメンバーとシロヤシオを見ながら西丹沢檜洞丸に登った。メンバーは50代から70代の女性7人。ネパールトレッキング経験者が2人、百名山踏破中が1人、還暦を過ぎて登り始めた山初心者が4人。年齢層にも幅があるが、山経験はさらに幅がある。これだけ違うと、山選びに四苦八苦する。

とはいえ、子供の頃に親に連れられ、近くの那須岳や浅間山によく登ったとか、山好きの母親と一緒に奥多摩や秩父の山によくキャンプに行ったとか、全員が幼少期に山や川、大自然にたくさん触れた経験を持っている。ちなみに私は、高校2年の夏に北アルプス北穂高岳を初体験し、学生時代にネパールに行き、還暦すぎに再び山に登り始めた。

多くの時間をスマホに奪われ、大切な自然との対話、自分との対話の時間を失っていることに、山に来ると気付かされる。自然による癒やしを求めて、大人のソロキャンプが静かな広がりを見せるのもよく分かる。

だから、居場所が欲しいと言う子供の声を聞くと、自然とのつながりを求める心の叫びのようにも聞こえてくる。残念なことに、少子化で青少年自然の家など自然体験型の公共施設の数は激減している。

登山家の故田部井淳子さんは、3・11震災以降、被災地の高校生のために「東北の高校生の富士登山」プロジェクトを立ち上げ、最期まで励まし続けた。子供にとって自然は大切な居場所。自然の創造美、命の大切さ、忍耐力、協調や共感の心など、大人も子供も山から学ぶことは実に多い。

だから山で、2、3歳の幼児を連れた若い親子連れに出会うと無条件に嬉(うれ)しくなる。「きっと、大人になったら山にハマる」

(光)

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