トップコラム【上昇気流】(2023年5月20日)

【上昇気流】(2023年5月20日)

運動会

ドーン、ドーン。先週の土曜日早朝、運動会の開催を告げる打ち上げ花火が上がった。どんよりとした空模様だが、その響きは「決行」の思いが詰まっている。小さな地方都市の小学校の運動会である。

コロナ禍明けの開催とあって一家総出、いや地域総出だ。病院や高齢者施設などで働くママさん職員は先月、出勤シフト作りで大騒ぎだったという。むろん、この日の休みを取るためだ。

出来上がったシフトは穴だらけ。病院では病棟の看護師が急遽(きゅうきょ)、外来診察室の応援に回ったり、夜勤者がそのまま日勤に入ったり、大忙しの一日となった。それでも文句を言う人は一人もいない。思い出を共有しているからだろう。

「近代五輪の父」として知られるクーベルタンは、英国のパブリックスクール(私立中等校)のラグビー競技に五輪のヒントを得たが、日本の運動会の起源も英国である。1875年に来日した英国人教師ストレンジが東大などで行った競技会が全国に広がった。彼は英国の「紳士の精神」をスポーツに込めた。

それを日本の徳育に昇華させたのは東京帝大総長などを歴任した数学者、菊池(きくち)大麓(だいろく)である。66年、11歳で幕命を受け英国に留学。維新後、再び英国に渡ってケンブリッジ大学に学び、ラグビーにも興じた。クーベルタンの訪英より10年ほど前のことである。

号砲とともに盛り上がる、われらの運動会は近代五輪より長い歴史を誇るのだ。さて、きょうの天気はどうだろう。

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