10月に予定されていた東京電力柏崎刈羽原発の再稼働が怪しくなってきた。原子力規制委員会は定例会合で、テロ対策の不備で出された運転禁止命令について、再発防止策が不十分として解除しないことを決めた。
設備面や運用面での27項目のうち、23項目は改善されたが、荒天時に侵入検知装置の誤作動を防ぐ取り組みが目標に達していなかったことなど4項目が不十分とされた。
テロリストの侵入を物理的に防ぐのは、警察ないし自衛隊の責任になるが、監視体制は原発側があらゆるケースを想定して整える必要がある。日本の原発はみな海岸にあるから、海からの侵入に対して想像力を発揮しなければならないだろう。電力会社と治安当局の連携がどれほど進んでいるのかも気になるところだ。
テロの場合は、比較的少人数の工作員や航空機による攻撃が想定されるが、ロシアのウクライナ侵攻では、軍による原発攻撃が行われた。今もロシア軍は南部のザポリージャ原発を占領している。原発を盾にしているのは明らかで、わが国でも対処研究が急務だ。
東電を含む電力大手7社の電気料金が来月から値上げされる。値上げ率は、最高が北陸電力の42%、最低が東電の14%だ。東電の値上げ率は、柏崎刈羽原発の再稼働を見込んでのものだ。
東電はテロ対策の改善に大車輪で取り組み、再稼働に漕(こ)ぎ着けるべきだ。われわれ利用者も、原発テロ対策を他人事(ひとごと)のように考えず関心を持つ必要があるだろう。