【心をつむぐ】洞窟の囚人となるなかれ

洞窟

古代ギリシャの哲学者プラトンは、『国家』の中で本当の真理「イデア」を説明するのに、洞窟の比喩を用いているが、現代に生きるわれわれもまさに洞窟の世界にいるといえる。

生まれた時から、洞窟に縛られて閉じ込められている囚人たちがいる。彼らは洞窟の壁のみ見つめて生きている。背後には火がともされているが、その存在を知らない。囚人と火の間には塀があり、その塀の上で人形を動かすと、壁に人形の影が映しだされる。囚人たちは影こそが世界の真実だと思い込む。

その影は、物欲や権力欲にまみれた主観的な世界を表しており、プラトンは、この比喩で人はそれこそが世界の全てだと認識してしまうことを表した、と解釈されている。

現代ではSNSなどインターネット、また新聞やテレビなど、いつも同じものばかり見て、いつの間にか与えられるもの、見えているものが全てだと思ってしまい、物事の本質、真実というものを見失いがちだ。

フランスの女性思想家S・ヴェイユは著書『前キリスト教的直感』(1942年)で、さらに解釈を深め、「プラトンが力強く描いている実在性の欠如は(中略)愛の対象となるものがない、ということである」とし、そのために自身の生の実在性を失ってしまっているとする。

そして、愛のために「神が人間のうちに降りてきて真の善を魂に開示する」ことの必要性をプラトンは説いているというのである。

(荘)

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