トップコラム【上昇気流】(2023年5月1日)

【上昇気流】(2023年5月1日)

京都市

京都市で2007年から続く「新景観政策」を緩和した都市計画が施行された。高さ規制の緩和を盛り込んでマンションやオフィスビルを増やし、人口減少などに歯止めを掛ける狙いがあるという。

緩和の対象地域は好立地の割に利用が遅れていたJR京都駅の南側や市周辺部。中心部には及んでいないが、地上131㍍の京都タワーが建った当初、気流子にはいささか違和感があった。そのようなことが今後、広い地域で展開されるのか、どうか。

心配されるのは景観の保護だけでなく、急場の住民の結束について。京都市在住のエッセイストで、市内で美容室を経営していた市田ひろみさん(昨年、90歳で死去)から、18年9月に強い勢力の台風21号が近畿地方を縦断した時のことを聞いていた。

この時、京都市内では公共施設や寺院内を含め数千本の倒木被害があり、並木道には無残な姿がさらされた。特に御所では200本以上の木が倒された。

しかし御所の関係者だけでなく、時を移さずに地元の人々が倒木の後始末に当たり、短期間で片付けをなしたのだ。市田さんは「急難の時には一致して立ち上がる京都人の素晴らしさ」を強調していた。

京都は、大勢の観光客への自然体のもてなしが魅力だ。そこには、ふだん目に見えないが、住民の旧都住まいに対する自負、災害時には共に対処しようとする共同意識の下支えがある。都市計画の進展で京都人の伝統の力が緩まないか。

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