右足の痛みがひどくなった妻が、かかりつけの整形外科に行った。腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症との診断で鎮痛剤、ブロック注射の治療を受けたが、それでも改善しない。「大きな病院で手術を受けた方がいいだろう」と言うので紹介状を書いてもらった。市立病院での検査の結果、やはり手術を受けることになった。
かかりつけ医は「難しい手術ではない」と言っていたので、妻は軽い気持ちで手術を受ける気でいた。しかし、手術前の検査入院から帰宅し「大丈夫かしら」と不安を漏らした。担当の若い医師から「セカンドオピニオンを聞いてもいい」と言われた上で、手術の承諾書に署名させられたことが原因らしい。承諾書には「合併症」として神経損傷、麻痺(まひ)、しびれ、肺塞栓症などが並んでいた。
医師側にすれば「インフォームドコンセント」として手術のリスクを挙げ、それが起きた時でも「最善の策」で対応すると説明しただけなのだろう。筆者も副鼻腔炎の手術で経験したが、それは手術を行う際の通常の手続き。問題は、医療者と患者とのやりとりの中で、患者が不安を覚えたのは、患者側の過剰反応なのか、それとも医療者側の説明の不十分さなのか、ということだろう。
もしものアクシデントを考慮し、承諾書に署名させることで、患者の「自己決定」という保険を掛けておこうという、医療者側の思惑が悪いとは言えないが、それはインフォームドコンセントの本質から外れているように思う。筆者の手術の時、大学病院の医師は「合併症が起きる確率はほとんどない」と、患者を安心させてくれた。
インフォームドコンセントとは、提供する医療について適切な説明を行い、患者の理解を得るというだけではない。医療者側が患者との信頼関係を築き、患者が安心して手術を受けることができるようにすることの方がより重要だと思う。妻は、きょう手術を受ける。
(清)