紳士的な野球人は素晴らしい

佐々木朗希投手(UPI)

WBC第1ラウンド、3月11日のチェコ戦に登板した侍ジャパンの佐々木朗希投手が4回、チェコのウィリー・エスカラ選手の膝に死球を与えてしまった。当初、倒れ込んで痛みを堪(こら)えていたエスカラ選手だったが、佐々木投手が脱帽し、謝罪の姿勢を示し、一塁手の山川穂高選手も帽子を取って謝罪した。エスカラ選手も一塁に進み、ライトのライン沿いに全力疾走で「元気だよ、大丈夫だよ」とアピール。喝采を受けた。

話はそれで終わらない。2日後の13日、佐々木投手はチェコ代表の宿舎を訪れ、両手いっぱいのお菓子の袋を渡した。チェコチーム関係者によると「みんなビックリしたよ。サインボールもくれた佐々木選手は真のスーパースターだ」と興奮気味に語った。

紳士的な態度を見て、思い出すのは1979年8月1日、広島市民球場で行われた広島対巨人戦の七回裏、広島の攻撃で西本聖投手が連続試合出場記録を続けていた衣笠祥雄選手(2018年、死去、71歳)に死球を与え、両軍入り乱れての乱闘が始まった。

西本投手は衣笠選手の元に走り寄って「すみません」と詫(わ)びを繰り返した。衣笠選手は「俺は大丈夫だ。それより、乱闘で危ないからベンチに帰れ」と気遣ってくれたと、後日、話している。

翌日、肩甲骨の亀裂骨折(球団発表)で当分出場できないだろうと、思われた。衣笠選手は翌朝、起きてみると「バットが握れる、振れる」と監督に直訴して代打で出場。巨人の江川卓投手と対峙(たいじ)した。結果は三振だった。江川投手は「相手が怪我人(けがにん)であろうと全力で投球するのがプロの礼儀」と後日語っている。対する手負いの衣笠選手も「1球目はファンのため、2球目は自分のため、3球目は西本君のため」とフルスイング。その後も2215試合連続出場を果たし、国民栄誉賞を受けた“鉄人衣笠の男気”が忘れられない。

(和)

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