NHKワールドTVで韓国でも放映中の大河ドラマ「どうする家康」に、家康がそうとは知らず同性愛者(レズビアン)を側室に迎えた場面が出てきたが、ジェンダー問題で日本以上に保守的だった韓国では同性愛を巡る苦悩や葛藤はもっと深かったに違いない。実話ではないが、19世紀末に書かれた小説『方翰林伝』にはレズビアンの主人公が登場する。勝手な想像だが、著者不詳になっているのはこの種のテーマがタブーだったからだろうか。
主人公は早くに孤児となり、家を守るため男装して科挙を受験し首席合格。軍の官吏として出世し、攻めてきた外敵を撃退するなど、男顔負けの活躍をする。ある日、お見合い相手の女性に一目で女性であると見破られるも、二人はそのまま“結婚”。実は相手もレズビアンで、威張りくさる夫の下で一生我慢するよりましと思ってのことだった。二人は誰もがうらやむおしどり夫婦(?)となり、主人公は死の直前に真実を告白するが、王は彼女の功績を高く評価した…。
先日、同性カップルの韓国人男性二人が健康保険の被扶養者資格認定を求めて起こした裁判の控訴審判決があり、高裁は一審を覆して資格を認めた。宗教界を中心に「今後、同性カップルを婚姻関係と認める口実にされる」と、懸念の声が上がっている。
韓国にも性的少数者(LGBT)の人権擁護を求める波が押し寄せている。今、小説『方翰林伝』を書くなら、主人公を男装させる必要も、著者を不詳にする必要もないかもしれない。
(U)