オーストリアでは3月1日から市電や地下鉄などの公共交通機関に乗る時のマスク着用義務はなくなった。そして6月末までに全ての新型コロナウイルス危機対策は終了し、コロナ下で実施されてきた予防接種、検査、投薬は、通常の医療システムに統合される。
コロナ感染防止のためにマスク着用が義務付けられた時、国民の中にはかなり強い抵抗があった。日本人はマスク着用に抵抗がないが、欧州ではマスク着用は顔を隠すもので、不自然なものといった考えが強いからだ。「マスクはアジア文化に属する」といった文化論すら一時期飛び出したほどだった。
ただ、新規感染者が急増し、コロナによる死者が増加すると、マスク着用に反対してきた国民も感染防止のためにやむを得なく着用するようになった。マスクなしで市電や地下鉄に乗れば監視員から注意され、最悪の場合、罰金が科せられることもあった。
その「マスク着用義務」から解放されたのだ。多くの国民は喜んでいるが、問題が出てきた。
マスク着用義務の解放後、市電や地下鉄でマスクを着けていた場合、行政違反で起訴されるケースも出てくるのだ。オーストリアでは公共の場で顔を隠したり、覆面を被ることは法的に禁止されており、マスク着用義務に関連する行政法が失効すれば、覆面禁止法が復活して有効となるからだ。健康上の理由でマスクを着用しなければならない場合、医師の診断書を提示する必要もある。ただし、憲法学者によると、公共交通機関でマスクを着用している国民が行政違反として起訴されることは現時点では考えられないという。(O)