檀家減らさぬお寺の苦労

墓参り

通勤途中のお寺の一角に「樹木葬」を銘打つ霊園ができたことは昨年8月、この欄で紹介した。当時、150基余りの埋め込み式墓石のうち、契約者は3件だったが、数日前、立ち寄ると、家名が刻まれた墓石は11基に増えていた。

半年ぶりに寄ったのは最近、父親を亡くした知り合いの体験を聞いたからだ。彼の父親はある寺(都内)の檀家(だんか)となっており、母親が眠る墓地もある。当然、父親の遺骨はその墓に納めるため、彼は住職に相談した。

そうすると、「あなたが檀家を継がないと、納骨はできない」と言われた。彼はそれまで考えてもみなかった話を持ち出されビックリしてしまった。しかし、遺骨はその墓に納めるしかないから、やむなく檀家を継続することを了承したという。寺に納める費用がそう高いものでなかったことも決断に影響したようだ。

そんな話を聞いて、筆者も子供を悩ませたくないので、今から自分と家内の墓をどうするか、考えなければいけないと思い、樹木葬の霊園に立ち寄ったのだ。筆者の姿を見て、言葉を掛けてきた霊園業者に、知り合いから聞いた話をしたところ、次のような解説をしてくれた。

寺によって違いがあるが、檀家を辞めても快く永代供養してくれる寺も少なくない。「納骨できない」ということではなく、檀家が減るご時世だから、住職の話は檀家を維持するための方便のようなものではないか。

それを聞いて思い出した。「檀家を継ぎます」と返事をした友人に、住職は「ありがとうございます。最近は檀家を辞めるという人が多いんですよ」と、ほっとした様子だったという。

最後に、墓じまいに数百万円も要求する寺もあるから、50万円前後で永代供養できる樹木葬は良心的だと微(ほほ)笑む霊園業者の顔を見ながら、「どんな墓でもいいが、お参りしてくれる人がいないのでは……」と複雑な心境になった。

(森)

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