.jpg)
2月下旬、春の陽気に誘われ、ダム建設でできた宮ケ瀬湖を見下ろす低山縦走に出掛けた。
残雪の丹沢山系を一望できる仏果山は700㍍級ながら、鎖場あり、痩せ尾根あり、気軽に山を楽しめるところが人気だ。
ただ低山でも、後期高齢者になって夫婦で来れる人はそう多くはない。だいたい70歳手前あたりから膝関節痛や腰痛が出てきて、山を断念する人が増える。
その日、登山口の駐車場で後期高齢者とおぼしき老夫婦と出会ったので、さっそく「仏果にはよく登るんですか」と声を掛けてみた。
「昔は百名山によく登っていたけど、今は低山しか登れないのよ」(奥様)。聞けば、81歳夫のリハビリを兼ねてほぼ毎週、低山巡りをしていると言う。
背丈もあり、頑強そうなご主人だが、平坦(へいたん)な所を片足を引きずりながらの歩行。それでも山に登り続ける精神力もすごいが、「遅いからイライラするのよ」と言いながら、夫の“山旅人生”に最期まで付き合う奥様の忍耐力には敬服する。
なぜかと言うと、健脚な人が遅い人に歩調を合わせていくのは結構大変なこと。わが家もテレワークが続いて運動不足の夫を誘って、時折低山に登る。上りが続くと、夫は途端にペースダウンし、休憩が多くなる。
さらに山に対する向き合い方の違いがある。ひたすら頂上を目指すタイプが草花や野鳥に心を向けながら歩くタイプに合わせるのはそれなりに忍耐がいる。その日は頂上で1時間近くも待たされ、イライラした。それでも、ひたすら高みを目指していた頃とはだいぶ変わってきた。下山できる体力を考えながら登るようになった。
人生を山に例えれば、とうに下山期に入っている。かの老夫婦のように二人三脚で最期まで歩調を合わせて無事に下山できるかどうか。山に行くたびに、忍耐力を試されているようである。
(光)