新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)以後、小紙の編集局にも新人記者が入ってきたが、いまだに顔と名前が覚えられない。もともと取材先に出ていることが多いことに加え、テレワークが増えたこともある。しかしそれ以上に、マスクを着けた顔しか見ていないので、印象が定かでないのが大きいようだ。
コロナ以前からの同僚はマスクをしていても、道で擦れ違った時には、お互いを認識し挨拶を交わすことができる。顔全体のイメージが記憶として残っており、眼(め)から上だけでもすぐに分かる。しかし、記憶がない新入社員に対しては難しい。
人間の顔は、眼、鼻、眉、口そして全体の形などトータルなものとして認識され記憶されるのだろう。決してパーツの寄せ集めではない。そして、どんな顔でも全体として微妙な調和がある。美容整形をした顔がどこか不自然なのは、そのためではないか。
そんなことを考えると、コロナ蔓延以後、マスクを外した級友の顔をほとんど見ずに過ごしてきた児童生徒は本当にかわいそうだ。コミュニケーションの質が大きく下がってしまうし、学校での思い出も希薄なものになってしまいそうだ。
来月13日からマスク着用は個人の判断との方針を政府は出した。学校現場では4月1日からだ。卒業式では着用を求めないとしているが、変な話だ。
本来、入学式で知るはずのお互いの顔を、卒業式で知るというのはあまりに皮肉だ。卒業式前に外せるようにすべきだろう。