【上昇気流】(2023年2月26日)

列車

もう数十年以上も前、大学受験の合格発表の掲示を見てから、上野駅発の普通列車(鈍行)で東北の故郷に帰ったことがある。いつもであれば数時間ばかりだが、各駅停車で10時間近くはかかった。故郷の駅に着いた時は深夜になっていた。バスもなく徒歩では遠過ぎるので、初めてタクシーで帰宅したことを思い出す。

高揚した気分をずっと味わいたいというものがあったからだろう。車両の窓から見えた単調で灰色だった景色も、いつもとは違った印象だったことを覚えている。

ここ数年、新型コロナウイルス禍で旅があまりできなかった。それが割合自由にできるようになった。旅の乗り物としては、飛行機や自動車よりも列車をイメージする。その中でも旅に似合うと思うのは、新幹線や特急よりも、のんびりした普通列車である。

鉄道ミステリーで一時代を築いた西村京太郎の作品なども思い浮かぶ。読みふけって旅をした気分を味わったことが懐かしい。とはいえ、ミステリー小説は殺人事件が主になっているので、普通の旅という感じはしなかった。

列車に乗ることだけを目的とした乗り鉄というのを知ったのは、鉄道紀行作家の宮脇俊三の『時刻表2万キロ』や『最長片道切符の旅』からだ。

ただ延々と列車に乗る旅は、旅の概念を変えたと言っていい。その宮脇は2003年のきょう亡くなった。生前自ら付けた戒名の「鉄道院周遊俊妙居士」から、忌日は「周遊忌」と呼ばれている。

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