
『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』などの作品で知られる漫画家の松本零士さんが亡くなった。零時社の代表取締役で長女の松本摩紀子氏は「星の海に旅立ちました」とコメントを発表した。
『宇宙戦艦ヤマト』は、のちのアニメブームの先駆けとなった。旧日本海軍連合艦隊の旗艦、戦艦大和が「宇宙戦艦」として復活し、宇宙の果てイスカンダルへ向かい地球を救うというストーリーである。
日本が誇る世界最大の戦艦大和は、実際の戦闘では46㌢主砲などその威力を発揮することができなかった。1945年4月7日、沖縄特攻に向かう途上、米軍の猛攻を受け鹿児島の南の海で沈没した。
その大和が、今度は宇宙戦艦として、乗組員の多大な犠牲を払いながらも、その力を発揮し、地球を救うミッションを見事成し遂げる。こんなストーリーが、かつて大和が沈んだ無念を潜在意識の中に持つ日本人の心を捉えた。
宇宙戦艦としてであれ、大和が復活するのは、左翼風潮が強かった頃には難しかっただろう。しかし70年代も半ばとなり、全共闘運動の挫折、連合赤軍事件の影響などで左翼学生運動も力を失っていた。それも幸いし、このアニメ映画は幅広い年代層の心をつかんだ。
同じく宇宙を舞台にした『銀河鉄道999』に、松本さんは異なるメッセージを込めた。謎の美女メーテルはアニメ史に残るキャラクターだが、何よりその人物像に松本さんのメッセージが込められている。