つい先日、テルアビブからエルサレムまで高速鉄道に乗った。車内は、東京のラッシュアワーを思わせるほどの混みようで、英語でいう「缶詰のイワシ」状態だった。
隣の人に聞いたら、エルサレムで行われる反政権デモに参加するという。確かによく見ると、国旗やポスターを持っている人がいる。このところ各地で、司法制度の改革を進めて議会の権限を強めようとする現政権に対し、抗議デモが頻繁に行われている。
青年からお年寄りまで、ぎゅうぎゅう詰めだが、周りの人とまるで前からの友人のように会話している。座っている人が、立っている人の手荷物を持ったり、コートを棚に置いてあげたり、見知らぬ人同士がごく自然に助け合っていた。イヤホンを落とした人がいたが、身動きが取れない状態にもかかわらず周りの人たちが探し始め、見つかった時には拍手が起きた。
いつも思うが、イスラエル人の連帯感には目を見張るものがある。不快な環境でも、助け合いながらその状況を笑って楽しもうとする余裕があり、他人という概念がないようだ。
ある人が抱えていたバースデーケーキは、人が通るたびにあちこち移動して置かれ、つぶされないように皆が気を配っていた。
通常は30分のところを70分もかかってようやくエルサレムに着いた。その瞬間、「たどり着いたぞ!」と歓声が上がった。
デモに参加する人たちのシュプレヒコールが、駅の構内から既に沸き起こっていた。(M)