トップコラム【上昇気流】(2023年2月15日)

【上昇気流】(2023年2月15日)

三菱航空機「スペースジェット」の試験機=2019年12月10日、米ワシントン州モーゼスレイク(時事)

三菱重工業は、愛知県などを拠点に開発を進めた国産初の小型ジェット旅客機「スペースジェット」(旧MRJ)の開発中止を発表した。事業化のめどが立たないためだが、残念無念だ。

愛知県周辺はわが国が誇るハイテク産業のメッカで、航空機産業も集積している。H2Aロケットの機体中心部分の製造を行った三菱重工飛島工場(愛知県飛島村)、航空自衛隊の輸送機C2の川崎重工業岐阜工場(岐阜県各務原市)などがある。

それらと関係した部品メーカー、通信関連など先端技術を扱う大企業から小企業、その工場も多い。地元企業の協力関係、絆は強く、2005年愛知万博の最終的な成功をもたらした。

納期の延期が繰り返され、ある程度予想されたことだが、地元のショック、打撃も大きい。今回、米欧が決めてきた航空分野のルールの下、型式証明(TC)の取得が極めて困難で、その厚い壁に弾き飛ばされた。

「日の丸ジェット」を軸に航空産業を育成する官民の構想は頓挫したが、挑戦を忘れないでほしい。日本はパーツや素子の研究・開発者は多くいるが、技術の全体像を把握し、指導する人が少ないと言われる。中止までに三菱重工は開発子会社の社長を何人も交代させた。

戦後初の国産旅客機YS11の設計、開発者の木村秀政氏を生前、何度か訪ねた。いつも航空の未来像や可能性、大空の魅力を語って尽きなかった。飛行機開発に夢を抱く若者が輩出されるのを願うばかりだ。

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