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「ぼくにとって戦争とは、うなりをたてて飛んでくる弾丸、地面をはね回る鉄の破片を意味した」――。スペイン内戦に参戦しフランコ軍と戦った英国作家ジョージ・オーウェルがその体験を綴(つづ)った『カタロニア讃歌』(都築忠七訳、岩波文庫)の一節である。
咽喉部に貫通銃創を負ったオーウェルならではの言葉だ。しかし、この後に次のような文章が続く。「とりわけ戦争は、泥のぬかるみ、しらみ、飢え、それに寒さであった。奇妙なことだが、ぼくは敵が怖い以上に寒さがもっと怖かった」。
オーウェルが冬場に経験したのは、アラゴン戦線での塹壕(ざんごう)戦だ。スペインも冬は結構寒く、気流子も雪のマドリードに滞在したことがある。アラゴン山地はもっと寒いだろう。銃弾は全ての兵士に命中するわけではないが、寒さは等しく襲ってくる。
ウクライナではロシア軍が侵攻1年を機に大規模な攻勢をかけてくるとの予測がしきりだ。戦車を大量に動員した戦闘は、地面が凍り付いている今が有利との算段だろう。あるいは発電所などへの攻撃で、ウクライナの人々が寒さに苦しんでいるからとの考えか。
小雪がちらつくウクライナからのテレビ中継で、寒さは伝わってくるが、本当の厳しさは現地でなければ分からない。
マグニチュード7・8の地震が起きたトルコ南部とシリアの国境地域の人々も、命の懸かった寒さとの戦いの中にある。地震国日本ができることは多い。迅速な支援が求められている。