プレートテクトニクス研究の第一人者で、地球物理学者の上田誠也東大名誉教授が亡くなった。地球表面を覆う十数枚の岩盤(プレート)が移動し、相互作用することで地震や火山活動が起きるとするプレートテクトニクス理論。1960年代後半以降発展し、地球科学に一大転換をもたらした。
上田氏は早期から研究に取り組み、同理論による地球現象解明で成果を挙げた。一般向け著書もあり、地球観の基礎を簡潔にまとめ提示してくれた。87年に日本学士院賞を受賞。
退官後、地震の「直前予知」の研究にも取り組んだことはあまり知られていない。従来の地震計測による予知では足りないとして、大地震の前兆現象とされる地電流や地磁気の変化などに着目する「地震予知学」を提唱した。
2016年の熊本地震発生直後、インタビューし余震の有無について聞くと「今の地震学では起こった地震がどんなものかは分かるが、これから何が起こるか分からない」とはっきりおっしゃった。明快な答えだった。
また「地震予知は犠牲者を少なくするという観点がないといけない」として、当時、限定的な島のレベルでは予知に成功したとされるギリシャの研究者との交流を話してくれた。直前予知の研究は日本地震予知学会に引き継がれた。
上田氏の話は地球を大づかみし、地球をわが子のように愛していることが伝わった。自然になじむ、一つになるとはこういうことかと思った。享年93、合掌。